量子情報技術のための「古くて新しい」メーザー

2020. 5. 20

沖縄科学技術大学院大学 久保 結丸

超伝導量子コンピュータに代表されるように,マイクロ波周波数帯で動作する極低温固体量子デバイスの研究が目覚ましい勢いで進展しています.その根幹をなす技術の1つに,極低温 (~10 mK) において超微弱なマイクロ波信号(~< fW)をいかに効率良く増幅できるか,が挙げられます.これまでは,この極低温におけるマイクロ波増幅は専ら超伝導体を用いたジョセフソンパラメトリック増幅器を用いてのみ実現されてきました.しかしながら,ジョセフソンパラメトリック増幅器は飽和パワーが小さく,また磁場中では動作しないなどの欠点があります.これらは汎用化への弊害と考えられます.

本研究では,スピンの誘導放出を利用したメーザー(Microwave Amplification by Stimulated Emission of Radiation,誘導放出によるマイクロ波増幅) の原理を用いて「古くて新しい」極低温マイクロ波増幅器を実現しました(図).我々は,メーザー増幅器は極めて高い飽和パワーを持ち,なおかつジョセフソンパラメトリック増幅器に匹敵する超低雑音増幅器を実現していることを確認しました.[特許申請済, 米国16/806,874, 日本2020-035699].