サブサイクル中赤外パルスを用いた光波駆動STMの開発

2019.11.25

横浜国立大学 工学研究院  武田 淳

キャリアエンベロープ位相(CEP)を制御したテラヘルツ(THz)パルスと走査型トンネル顕微鏡との融合(THz-STM)は、光の回折限界を打破し、ナノ〜原子スケールで電子を高速操作することを可能にしました1,2中赤外パルスとSTMを融合させることができれば、時間分解能を大幅に改善することができ、かつ中赤外領域特有の分子内振動や格子振動・電荷移動などの諸現象を原子レベルでその場観察し操作することが可能となります。しかしながら、その達成には、以下の要請を満たす中赤外パルスの発生が必須です。すなわち、高いCEP安定性を有する広帯域なサブサイクルパルスであること、電子トンネリングを誘起できる程度の高電場尖頭値を有すること、高いSN比でトンネル電子を検出するために高繰り返しであること、の3点です。

本研究では、optical parametric chirp pulse amplifier(OPCPA)から出力されたパルス幅8.2 fs、繰り返し4 MHz、平均出力4.3 W、中心波長 850 nmの近赤外パルスとGaSe結晶におけるタイプI位相整合による光整流を用いることで、中心周波数27.5 THz、パルス幅31 fs、電場尖頭値190 kV/cmの中赤外パルス発生をCEP揺らぎ56 mrad(5.6時間)の安定性で達成することに成功しました。

Reference: K. Yoshioka I. Igarashi, S. Yoshida, Y. Arashida, I. Katayama, J. Takeda, and H. Shigekawa, Opt. Lett.44, 5350-5353 (2019). (doi.org/10.1364/OL.44.005350)

1)K. Yoshioka et al., Nat. Photon. 10, 762 (2016).

2)K. Yoshioka et al., Nano Lett. 18, 5198 (2018).