【プレスリリース】完全位相制御テラヘルツ近接場による超高速ナノ空間電子操作技術を開拓

2018.10.31

横浜国立大学 武田 淳

現代の情報技術は電子制御の「高速化」と「微細化」の推進により発展してきました。しかしながら,従来技術の延長には限界があり,高度情報化社会を支える電子制御技術の発展に陰りが見えはじめています。近年,電子制御を飛躍的に高速化させる次世代の手法として,超短パルスレーザーや単一サイクルのテラヘルツ(THz)波のキャリア・エンベロープ位相(以降,CEP;光・THz波中の振動電場の位相)を積極的に利用することが提案され,光・THz電場の振動周期よりもさらに短い究極の時間スケールで電子を操ることが可能となってきました。そこで,当研究グループでは,CEPを制御した高強度THz波と走査型トンネル顕微鏡(STM)を組み合わせたTHz-STMを開発し,回折限界を超えた超微細領域で電子をコヒーレントに自在に操作できることを実証してきました。

今回、更に広帯域THz位相シフタをTHz-STMに組み込むことにより,はじめてTHz近接場波形のその場(in situ)観察を可能にしました。更に,THz位相シフタのCEPを0〜2πと連続的に調整することにより,探針形状に依らず,任意の単一サイクルTHz近接場を創り出すことに成功しました。そして,実験結果と有限統合シミュレーションを比較することにより,THz近接場波形が探針におけるマクロスコピックな電子の集団運動によって決定されることを突き止めました。また,時間間隔を調整したダブルパルスのTHz近接場を用いることにより,探針・試料間に電流バーストを創り出し,そのタイミングや方向をフェムト秒の精度で制御し,直接計測できることを実証しました。これらの成果は,超高速かつ微細空間での電子制御技術に新たなプラットフォームを提供するものであり,次世代超高速ナノエレクトロニクス開発や強光子場物理の学問分野に新風を吹き込むものと期待されます。

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横浜国立大学プレスリリース
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原論文情報
Katsumasa Yoshioka, Ikufumi Katayama, Yusuke Arashida, Atsuhiko Ban, Yoichi Kawada, Kuniaki Konishi, Hironori Takahashi, and Jun Takeda, Nano Letters 18, 5198-5204 (2018). (DOI:10.1021/acs.nanolett.8b02161)