光子-電子コヒーレント操作に向けたEr位相緩和時間の長寿命化

2018.03.15

NTT物性科学基礎研究所 俵 毅彦

エルビウム(Er)希土類元素の同位体純化により、167Er超微細構造準位間光学遷移の位相緩和時間T2の長寿命化に成功しました。これは167Er以外のEr同位体自身から発生する磁気ゆらぎを抑制したことによるもので、同位体純化しない場合と比べ約4倍(1.5マイクロ秒)に長寿命化しました。我々が着目しているEr中の4f軌道電子状態は通信波長帯光子と相互作用が可能で、かつ長いエネルギー緩和時間T1(約11ミリ秒)を示すため、光子による量子コヒーレント操作の実現に有望な物質です。しかしEr自身のもつ電子スピンやErを添加する母体結晶構成原子の核スピンから生じる磁気揺らぎにより、T2は理論的な限界(T2 ≤ 2T1)からはるかに短く(約400ピコ秒)なり、これが操作時間を制限していました。今回得られたT2時間は依然としてT1限界には達していませんが、これはErを添加したホスト結晶構成元素からの核スピンゆらぎに由来することもスペクトルホールバーニング測定により分かりました。そのため現在、核スピンが排除されたホスト結晶をSi基板上にエピタキシャル成長し、Erを添加する試みも同時に進めています。これらの成果は、通信波長帯で動作する光-電子(スピン)量子コヒーレント操作デバイスの実現に向け、重要な指針を与えるものです。

Ref: T. Tawara, G. Mariani, K. Shimizu, H. Omi, S. Adachi, H. Gotoh, “Effect of isotopic purification on spectral-hole narrowing in 167Er3+ hyperfine transitions,” Appl. Phys. Express 10, 042801 (2017).