半導体ドット中の単一Crスピンの検出と制御

2018.03.12

筑波大学数理物質系 黒田 眞司

近年、種々の系で単一のスピンを操作し、量子演算への応用を目指した研究が行われています。私たちは単一スピンの系として量子ドット中に遷移元素の原子1個を含む試料を対象とし、ドット中の単一磁性スピンの振舞いを調べ、制御する手法の開拓を目指して研究を行っています。ドット1個にちょうどCr原子1個を含むCdTe自己形成ドットをMBEにより作製し、ドット中の励起子発光測定によりCrスピンの状態を調べました。その結果、Crスピンの準位は格子歪により分裂し、さらに励起子との交換相互作用により分裂が生じるというエネルギー構造が明らかとなりました。さらに、共鳴励起によりCrスピンの特定の成分を生成し、発光の時間変化を測定することでCrスピンのダイナミクスを調べることができました。励起子の存在しない暗状態でのCrスピンの緩和過程の観測では、マイクロ秒オーダーの長い寿命を持つことが明らかにされ、単一Crスピンを量子ビットとして用いる量子演算の可能性が示されました。
今後は、格子歪によるCrスピン準位の分裂を利用して、表面弾性波によりCrスピンの状態を動的に変調することを目指して研究を進めます。(491字)