傾斜歪超構造によるスピン・フォノン結合制御とフォトン励起

2017.10.31

東京大学 田畑 仁

ガーネット型酸化鉄の極薄膜において、傾斜格歪の存在を実験的に明らかにし、空間反転対称性の破れに伴う、電気的・光学的物性異常を確認しました。ガーネット単結晶基板(GGG)上に結晶成長させたサマリウム鉄ガーネット(SmIG)薄膜において、基板との格子不整合(1%)により、50nm厚さの正方晶歪層(5%均一歪)と、約20nm範囲にわたって傾斜格子歪層(5%~0%)が形成されていることが高分解能電子顕微鏡により明らかになりました。そして、この空間反転対称性の破れにより、誘電率が1桁近く増大し、フォノン緩和に対応する光学的特性の消衰項が減少することを見つけました。さらにこの傾斜歪領層が支配的な薄膜において、O(2p)からFe(3d)への電荷移動遷移とFeのd-d遷移に対応するフォトンエネルギー励起による磁気円二色分光より、スピン配列が垂直方向に数倍安定化(ブロッホ磁壁移動のピニングが増大)することが分かりました。一方、格子ミスマッチが約2%のルテチウム鉄ガーネット(LuIG)/YAGや、ほとんどミスマッチの無いヘテロエピタキシャル系、そのようなピニングは全く観察されず、面直磁気異方性も非常に小さいものであることが分かりました。これらの成果は、室温で安定動作するスピンとフォノン励起素子のデバイス設計の鍵になるものと思われます。