【プレスリリース】熱の波動性を用いた熱伝導制御に成功

東京大学生産技術研究所

野村 政宏

熱伝導は熱の運び手であるフォノンの移動で説明され、ほぼ全ての熱伝導現象は粒子的な描像で説明されてきました。しかし、熱の本来の姿は原子などの振動であり波動性を持っているため、可干渉性が保たれた周期的な構造中では干渉を起こし、熱伝導が変化する可能性が指摘されていました。しかし、従来の電気的な測定手法では、一度に測定できる数に限りがあり、系統的で誤差の小さい実験は不可能でした。
本研究では、光を使って非接触で熱伝導計測を高精度に行える高速測定システムを開発し、シリコン薄膜に周期的に円孔をあけた構造(フォノニック結晶)と、その周期性をわざと乱した構造の熱伝導を高精度で比較しました。その結果、周期性を少し乱すだけで熱伝導が変化することを初めて見いだし、熱の波動性を利用して熱伝導を制御できることを実証しました。今回の実証実験は、低温下で行われましたが、今後、より微細な構造を用いることで室温においても効果が見込まれ、より高度なフォノン場・輸送制御技術および熱伝導制御技術の実現が期待できます。本成果は、2017年8月4日(米国東部時間)に米国科学誌「Science Advances」オンライン版に掲載されました。

原論文情報
雑誌名:Science Advances <strong>3</strong>, e1700027 (2017).
論文タイトル:Heat conduction tuning by wave nature of phonons
著者:J. Maire, R. Anufriev, A. Ramiere, R. Yanagisawa, S. Volz, and M. Nomura
DOI番号:10.1126/sciadv.1700027
アブストラクトURL: http://advances.sciencemag.org/content/3/8/e1700027