カーボンナノチューブのエネルギー準位

2017.08.01

東北大学 泉田 渉

カーボンナノチューブの発見以降、これまで多くの研究がなされてきました。なかでも電子スピン状態に関する知見はスピントロニクスの観点からも重要です。しかしスピン状態に関する詳細がわかってきたのは比較的最近のことです。私たちはナノチューブの電子状態を理論計算により調べました。有限の長さのナノチューブに閉じ込められた電子のエネルギー準位は、ナノチューブの結晶構造やナノチューブ端の原子構造に敏感であることがわかりました。従来は、エネルギーバンドの最小点(谷)が2箇所に存在することを反映して、エネルギー準位の縮退が起こると考えられていました。しかし、多くのナノチューブにおいて谷間結合が起こり、これにより縮退が解けることがわかりました[1]。このときナノチューブの電子スピン状態は電子数の偶奇によって決まります。

上記研究の過程で、ナノチューブ端付近に局在した電子波が重要な役割を果たすこともわかりました。この点をさらに調べることにより、端状態とトポロジカル不変量との対応関係[1]や、外場によりトポロジカル相転移が引き起こされる[2]といった、トポロジカル物質としての性質も示されました。

[1] W. Izumida, R. Okuyama, A. Yamakage, R. Saito, Phys. Rev. B 93, 195442 (2016).
[2] R. Okuyama, W. Izumida, M. Eto, J. Phys. Soc. Jpn. 86, 013702 (2017).