構造欠陥による単層グラフェンのフォノン制御とその応用

2016.11.4

大阪府立大学 有江 隆之

我々はこれまで、ナノカーボン材料の熱伝導は主にフォノンが担っていることに着目し、構造制御による熱伝導のコントロールを行ってきました[1,2]。このような熱伝導制御の試みは、熱マネジメント材料への応用に向け、特に熱電変換デバイスの効率を向上させる上で、非常に重要な知見を与えると期待しています。

図はグラフェン内に人為的に構造欠陥を導入したときの、グラフェンのラマンスペクトルと熱伝導率の変化を表しています。酸素プラズマによりグラフェン内の欠陥量を増加させると、欠陥に起因するDバンドのピークが徐々に増加していくことが分かります。さらにグラフェンを架橋構造にして熱伝導率を測定すると、欠陥を導入していないグラフェンでは熱伝導率がおよそ2,670W/mKだったのに対し、欠陥を導入したグラフェン(DバンドとGバンドの強度比ID/IG≈2.4)では熱伝導率は150W/mKになりました。またこのときの欠陥密度はおよそ炭素原子1000個中、1個が欠損している状態であると見積もられました。これらの結果は、構造欠陥が効果的にフォノン伝導を抑制し、グラフェン内の熱伝導率を低下させることを示しています[3]。

[1] Y. Anno, K. Takei, S. Akita, and T. Arie, Phys. Status Solidi RRL 8, 692 (2014).
[2] Y. Anno, K. Takei, S. Akita, and T. Arie, Adv. Electron. Mater. 1, 1500175 (2015).
[3] Y. Anno, Y. Imakita, K. Takei, S. Akita, and T. Arie, submitted.