半導体ダイオードにおける零次元状態を介した共鳴ツェナートンネル

2016.10.4

大阪大学 森 伸也

我々は、量子輸送シミュレーションを中心に、理論的な研究を行なっています。最近、英国ノッティンガム大学のパタネ教授、イーブス教授のグループと共同研究を行い、半導体共鳴トンネルダイオードにおいて、禁止帯内に存在する零次元状態の磁気トンネル分光測定に成功しました [1]。

省電力トンネルトランジスタの実現に向けて、ツェナートンネルの理解が望まれています。また,禁止帯内に存在する局在準位を介したツェナートンネルを利用した量子情報処理デバイスも提案されています。我々は、磁気トンネル分光法を用いて共鳴トンネルダイオードにおける局在状態を調べました。磁気トンネル分光法は、固体内の局在準位に捉えられた電子の波動関数振幅を測定する手法です。

窒素原子を含む狭い禁止帯幅の半導体(In(AsN))を中央に有する、エサキダイオード型の共鳴トンネルダイオード(図1)の電流電圧特性を測定しました。そして、その低バイアス領域に、窒素原子に起因する局在準位によるピーク構造を観測しました。さらに、トンネル電流に垂直に磁場を印加すると(図2)、ピーク電流が磁場とともに減少する様子を観測しました(図3の丸印)。

ピーク電流の磁場依存性は、局在状態の波動関数振幅のフーリエ変換像に対応します。図3の実線に、幅3.6 nmのガウス型波動関数のフーリエ変換像を実線でプロットしました。良く一致することから、局在状態が放物線型のポテンシャルによって閉じ込められているとすると、閉じ込め幅は3.6 nm程度であることが分かります。ただし、今回の測定では、印加磁場の最大値が小さく、クーロンポテンシャル型の閉じ込めを仮定しても、同様の一致が得られました。すなわち、強く閉じ込められていることは分かりましたが、閉じ込めポテンシャルの形状に関しては、実験的には決定できませんでした。今後、印加磁場の範囲を広げることにより決定できると期待されます。

[1] D. M. Di Paola, M. Kesaria, O. Makarovsky, A. Velichko, L. Eaves, N. Mori, A. Krier, and A. Patané, "Resonant Zener tunnelling via zero-dimensional states in a narrow gap diode," Scientific Reports, Vol. 6, pp. 32039 (1-8), 2016.