トポロジカル絶縁体の量子伝導

2016.8.3

理化学研究所 川村 稔

我々の研究グループでは、電子スピンと軌道運動の相互作用を用いた量子エレクトロニクスの構築を目的として研究をおこなっています。スピン-軌道相互作用が支配的な効果を示す材料として、3次元トポロジカル絶縁体と呼ばれる物質群に着目し、その電気伝導特性に関する研究に取り組んでいます。3次元トポロジカル絶縁体は、試料内部のバルク部分は絶縁体であるにも関わらず、試料表面にグラフェンのような線形分散関係を持つ表面状態が現れるのが特徴です。このため、表面電子の相対論的効果に起因する新しい電磁気現象が期待されています。3次元トポロジカル絶縁体として知られている具体的な物質には、Sb2Te3やBi2Se3があります。

図1は分子線エピタキシー法により成長したCrドープ(Bi,Sb)2Te3薄膜をホールバー形状に加工した試料の写真です。この試料では、磁性元素であるCrと電子の間の交換相互作用によって表面状態にもエネルギーギャップが開き、ホール抵抗値がh/e2に量子化される量子異常ホール効果(図2)が観測されます。ゼロ磁場でもホール抵抗が高い精度で量子化するため、抵抗標準として応用できる可能性があります。抵抗標準の実現を目指し、デバイス構造や膜構造を工夫することによって、量子異常ホール効果の安定性を高めることを試みています。