フォノニクスによるフォノン制御技術の開拓

2016.7.1
東京大学 生産技術研究所 野村 政宏

フォノングループでは、結晶格子および機械構造の振動を制御する技術を開拓し、フォノンを介した異なる物理系間での量子状態相互変換や固体系のフォノン場・輸送制御の実現を目指した研究を進めています。

東京大学生産技術研究所の野村研究室では、最も微細加工技術が進展しているシリコンを材料に用いて、フォノニック結晶とよばれるフォノンに対する人工周期ナノ構造を形成することで、フォノンの状態密度制御と伝搬制御を行っています。

電子が結晶格子の周期ポテンシャルを感じてバンドを形成して輸送特性が決定されるように、フォノニック結晶では人工周期構造うまく設計してフォノンの輸送特性や状態密度を制御することが可能です [1]。固体には必ずフォノンが存在するため、フォノニクスによるフォノン制御技術の開拓は、ハイブリッド量子科学を含む広範な研究分野に恩恵をもたらすと期待されます。

これまでに、フォノニック結晶中のフォノン輸送シミュレータを開発し、フォノニクスを使うと「穴をあけると熱が通りやすくなる」というような直観に反する物理が可能になることなどを理論的に示してきました [2]。フォトングループの平川教授と連携し、実現にむけた実験を開始しています。また、フォノンのもつ波動性に基づいた熱伝導制御に世界で初めて成功するなど、フォノニクス分野のフロンティアを開拓しています。フォノンを主役として用いるほかにも、固体ハイブリッド量子系に要請される温度条件を緩和するなど、アシスト的な役割も期待できます。フォノニクスはまだ開拓が始まったばかりの若い分野ですが、その取り組みは着実に関心を集めてきており[3]、今世紀の重要な科学分野に成長するのではないかと期待して研究を進めています。

[1] R. Anufriev and M. Nomura, “Reduction of thermal conductance in two-dimensional phononic crystals by coherent phonon scattering,” Phys. Rev. B 93 045410 (2016).

[2] R. Anufriev and M. Nomura, “Thermal conductance boost in phononic crystal nanostructures,” Phys. Rev. B. 91, 245417 (2015).

[3] 図解:応用物理学会の未来予測, 応用物理 vol. 84, no. 8, P. 727 (2015).