量子テレポーテーション転写に成功

~光子の量子状態をダイヤモンドに保存、量子通信に新展開~

2016.6.6
横浜国立大学 小坂 英男

横浜国立大学大学院工学研究院の小坂英男教授とStuttgart大学(ドイツ)のグループは、量子通信に用いる光子を量子メモリーとなるダイヤモンド中に量子テレポーテーションの原理で転写して長時間保存する新原理の実証に、世界で初めて成功しました。
今回の成功は、核子と量子もつれ状態にある電子に光子を吸収させるだけで、直接作用しない核子に光子の量子状態を転写し、長時間保存可能なことを示す画期的な発見です。
今回得られた結果は、量子中継の基本原理である量子テレポーテーションを極めて単純な原理で実現し、光子の量子状態を直接は届かない遥か遠方に高速かつ確実に再生かつ長時間保存できることを示唆するもので、物理法則で絶対的な安全性が保証された量子通信網の飛躍的長距離化・高信頼化に道を開くものと期待されます。

量子テレポーテーションにはあらかじめ原子内に量子もつれを用意する必要があります。これには物質に内在する量子もつれを利用します。原子を構成する電子と核子のスピンは超微細相互作用という量子もつれを導く力でつながっています。我々はマイクロ波やラジオ波でこの量子もつれを純粋化することから始めました。次にこの量子もつれを種とし、先の論文(Hideo Kosaka, et. al., Phys. Rev. Lett., 114, 053603 (2015))で実証した吸収による量子もつれ検出の応用で光子の量子状態を核子に転写することに成功しました。
今回実証に成功した光子から核子への量子テレポーテーション転写の動作原理を図に示します。あらかじめ電子と核子を量子もつれ状態に準備しておきます。本実験ではこれをマイクロ波やラジオ波の照射で実現しています。その後、光子を電子に衝突(吸収)させます。その際に、光子と電子が特定の量子もつれ状態にあることを検出した際に、光子の量子状態が核子に転写されます。

掲載論文:
Sen Yang, Ya Wang, Thai Hien Tran, S. Ali Momenzadeh, M. Markham, D. J.Twitchen, Rainer Stohr, Philipp Neumann, Hideo Kosaka, and Jorg Wrachtrup
“High fidelity transfer and storage of photon states in a single nuclear spin"
Nature Photonics (2016), (doi:10.1038/nphoton.2016.103).

ニュースリリース:
http://www.ynu.ac.jp/hus/koho/16102/detail.html