量子ドットとメカニカル振動子のハイブリッド素子による高感度変位検出と振動増幅

2016.4.12

NTT物性科学基礎研究所 山口 浩司

高感度センサや高精度発振器に広く用いられているメカニカル振動子と量子ドットを結合した新しい半導体素子を作製し、量子効果を用いた超高感度の振動計測手法を実証しました。今回得られた成果は、力や磁気などの極限計測技術の感度を、量子限界にまで向上させる可能性のある新しい手法として期待されます。

鉄琴の板や鐘など、決まった周波数で振動が続く人工構造はメカニカル振動子と呼ばれます。昨今ではナノテクノロジーの進展により微細化や集積化が進み、MEMS (Micro-electromechanical Systems) 振動子として形を変え、センサや精密振動子などの微小素子として広く用いられています。このメカニカル振動子の振動を高感度に検出する手法は、重力波検出をはじめとした様々な極限実験における重要な要素技術であり、レーザ干渉計や超伝導素子などを用いた種々の方法が開拓されてきました。

研究チームでは、これまで培ってきた半導体素子技術の新しい応用として、MEMSや、さらにそれを微細化したNEMS (Nano-electromechanical Systems)の研究を進めてきました。半導体MEMS/NEMSは集積化や多重化に優れたプラットフォームであり、光・電子デバイスとのハイブリッド化により、これまでとは全く異なる機能を持つ集積回路の実現が期待されています。特にメカニカル振動子と量子ドットに代表される半導体量子ナノ構造の融合は、量子効果を用いた超高感度の計測手法などへの応用が期待されています。

今回、振動が引き起こす「歪」に対して敏感に特性が変化する量子ドットをメカニカル振動子に組み込んだ新構造の半導体ハイブリッド素子を試作し、量子ドットの抵抗値の変化より、振動子の微細な動きを高感度に検出することに成功しました。この結果は、半導体チップに集積可能な分子や磁気センサの感度や機能を極限にまで高める可能性を有する手法として、今後の発展が期待されます。また、メカニカル振動子の振動特性が、量子ドット中の電子状態により大きく変化することも観測されました。特に、量子ドットにより振動の増幅(Q値の向上)が見られた結果は世界で初めてで、電流によるメカニカル振動の増幅作用を実証したことに相当します。

 

掲載論文:

  1. Okazaki, I. Mahboob, K. Onomitsu, S. Sasaki, and H. Yamaguchi

Gate-controlled electromechanical backaction induced by a quantum dot

Nature Communications 7, 11132 (2016), (doi:10.1038/ncomms11132)

 

ニュースリリース:

http://www.ntt.co.jp/news2016/1604/160411a.html