乱層構造を有する多層グラフェンナノリボンの合成とその電気伝導特性

2015.12.1

大阪大学 小林 慶裕

大阪大学大学院工学研究科小林グループでは、電荷やスピンにかかわる量子情報を操作するプラットフォームとしてのカーボンナノチューブ/グラフェン/グラフェンナノリボン(GNR)の合成やそのハイブリッド化に向けた成長技術の確立を進めています。

優れたキャリア伝導特性を有するグラフェンをnmスケールに細線化したGNRは、電子の閉じ込めとエッジ効果の重畳によりバンドギャップが形成され、電子デバイスへの応用が期待されています。特に、乱層構造をもつ多層GNRは、グラフェン層間の相互作用が弱いため、多層でありながら金属的にならず、単層グラフェン状の電子構造(ディラック・コーン型)が維持され、高い移動度とON/OFF比が両立すると理論的に示されています。

これまでに、多層GNRの合成法として多層カーボンナノチューブをアンジップする方法が報告されています。しかし、出発材料である多層カーボンナノチューブの径が大きいため、量子効果が期待される幅~10 nm程度の微細な多層GNR構造は得られていません。九工大田中研究グループでは、本研究グループと共同して、数nm径の2層ナノチューブをアンジップしたGNRの合成や分子吸着によるハイブリッド化の研究を進めています[1]。この成果を基に、幅~10 nm程度の微細な2層GNR構造をテンプレートとして、その上に新たなグラフェン層を成長することに成功しました。得られた多層GNRは乱層構造をとっています。すなわち、特異な物性が期待される幅~10 nm程度の多層・乱層GNRの形成を実現したことになります(図1)。

そこで、本領域内での共同研究として、理化学研究所石橋グループと単一の多層GNRにおけるキャリア伝導特性の評価を推し進めています。図2に、成長前の2層GNRから得られたpreliminaryな結果を示します。狙った特定のGNRに対して素子を作製し、低温における微分コンダクタンスのゲート電圧特性の計測ができています。観測されたクーロンダイヤモンドの形状から、GNRが量子ドットとして振る舞っていること、ただしマルチドットを形成していることがわかります。この結果から、多層GNRが量子デバイスとして応用可能であることが期待されます。今後は、成長させた多層GNRでのキャリア伝導特性解析へと進めると共に、13C同位体グラフェン層の導入による電荷・核スピンハイブリッド素子創成への展開を図ります。

[1] H. Tanaka et al., Scientific Reports 5(2015)12341.