カイラルフォトニック結晶を用いた円偏光輻射場制御と量子ドット発光制御

2016.1.1

東京大学 岩本 敏

光子-スピン間の高度量子インターフェースの実現には、円偏光状態の効率的生成技術や円偏光光子と物質の相互作用の制御技術の開拓が重要である。これら技術の基礎となる概念が、円偏光光子の輻射場自体の制御である。

フォトン班の東大生研・岩本グループでは、同じく東大生研の荒川泰彦教授と共同で、半導体カイラルフォトニック結晶を用いた円偏光輻射場の制御とそれを利用した量子ドットと円偏光光子の相互作用の増強・制御の実現を目指して研究を進めている。

カイラルフォトニック結晶は光の波長程度の周期構造を有する三次元キラル構造で、円偏光を固有偏光としてフォトニックバンドが形成されるため、左右円偏光の状態密度の制御が可能となり、人工的旋光性の実現や円偏光発光の増強などが可能になると期待されている。特に半導体系は量子ドットとの融合が容易であり、原理的には電気的光学特性のチューニングなども可能であることなどから、本領域がめざす量子ハイブリッド系に適した材料系である。

荒川・岩本研究室では、これまでに培ってきた三次元フォトニックナノ構造形成技術を利用して半導体を用いたカイラルフォトニック結晶の実現に成功しており、巨大旋光性[1]や広帯域円二色性[2]などを報告している。これらの成果は、応用物理学会誌の特集号[3]にも取り上げられている。また、ごく最近、カイラル三次元フォトニック結晶中に形成された光共振器モードの観測にも成功した。この成果は、2016年3月に開催される応用物理学会で発表する予定である。

 

[1] S. Takahashi, A. Tandaechanurat, R. Igusa, Y. Ota, J. Tatebayashi, S. Iwamoto, and Y. Arakawa: "Giant optical rotation in a three-dimensional semiconductor chiral photonic crystal", Optics Express, 21, pp. 29905-29913 (2013).

[2] S. Takahashi, T. Tajiri, Y. Ota, J. Tatebayashi, S. Iwamoto and Y. Arakawa: "Circular dichroism in a three-dimensional semiconductor chiral photonic crystal", Appl. Phys. Lett. 105, 051107 (2014).

[3] 図解:応用物理学会の未来予測, 応用物理 vol. 84, no. 8, P. 717 (2015).